アレキサンドライト

揺らめく色変わり、昼はエメラルド、夜はルビーと謳われるアレキサンドライト。 指輪やネックレスなど宝飾品映えする稀代の美宝石の一つです。審美性を左右する変色の原理から、石の歴史と評価、そして選び方をお伝えしたいと思います。

アレキサンドライトの由来

アレキサンドライトは1833年にロシアのウラル山脈で発見され、見つかった日がロシア皇帝アレクサンドル2世の誕生日だった為、皇帝の名を取りアレキサンドライトと命名されました。6月の誕生石であり、辿ればロマノフ王家に行き着く宝石がゆえ「高貴」「光栄」などの神々しい石言葉を持つ宝石として知られています。

アレキサンドライトの性質と特徴

鉱物種 クリソベリル
モース高度 8.5
屈折率 1.746~1.755
多色性 3色性(緑、赤、オレンジ)
蛍光性 クロムによる赤色蛍光
光学現象 イルメナイト内包によるキャッツアイ効果

アレキサンドライトはコランダム(ルビー、サファイア)に次ぐ硬度があり、ベリリウム、アルミニウムの酸化物であるクリソベリル種に属する宝石です。クリソベリルは淡い黄~黄緑色の宝石ですが、結晶内のアルミニウムがクロムに置換すると変色効果を持つ変種のアレキサンドライトになります。ただしクロム量が少ない場合は、軽度な色変化のカラーシフトクリソベリルと認定されてしまいます。

アレキサンドライトの変色効果

  • 青緑から赤紫
  • 緑から紫(赤紫)
  • 黄緑色から褐色を帯びた紫
  • 緑から紫みを帯びたピンク

一つとして同じ対比が見られない幅広い色合いが特徴です。

アレキサンドライトの色が変わる原理

角度によって異なる色に見える多色性ではなく、光源の違いによる吸収と反射によるものです。自然光下で赤色系統の色を吸収し、青、緑色を反射し、白熱光下では青色系統の色を吸収し、オレンジ、赤色を反射する為、目に映る色合いが光源によって違って見える原因になります。

産地によって異なる変色効果と色

アレキサンドライトはペグマタイト鉱床、漂砂鉱床などで産出しますが、産地によって変色効果が異なり、産地の特定が可能です。ここでは主要な産地とその特徴を解説します。

ロシア産

ロシアのウラル山脈で発見された歴史から、ウラルクリソベリルと呼ばれたこともありました。ロシア産は鮮やかな色合いのアレキサンドライトが産出しましたが現在は枯渇してしいます。なお100年以上前に制作されたアンティークジュエリーには、驚く品質のロシア産アレキサンドライトが使われていることも少なくありません。

ブラジル産

1980年代にミナスジェライス州のヘマティタ鉱山で最高品質のアレキサンドライトが見つかりました。ロシア産と比べると自然光下での緑みが少ないですが、透明度が高く色変わりが強いのが特徴です。通常は歴史的背景が根強く残るロシア産と共に、魔法を覗かせるような変色と色の対比を見せるブラジル産が最高峰の産地と考えられています。

インド産

1990年代~2000年代前半にインドでもアレキサンドライトが発見されましたが、品質は高くありません。自然光下でライトなピュアグリーンを示し、カラーチェンジは控えめで、通常はカボション状に研磨されます。

アフリカ諸国

ジンバブエ、ザンビア、タンザニア、マダガスカルなどのアレキサンドライトは、一般的に自然光下で茶色みが強いのが特徴です。なおタンザニア産は薄めのトーンのオリーブグリーンからピーチレッドの変色を見せ、ブラジル産に似た石が産出します。

アレキサンドライトの評価ポイントと選び方

またアレキサンドライトは引き上げ法、水熱法などの合成アレキサンドライトや、カラーチェンジガーネット、合成コランダムやダブレット石が紛れ込むことも少なくありません。天然と鑑別されたソーティングや鑑別書がある石を選ぶことは、リスク管理の面でとても重要です。

変色の強さ

光源下でのカラーチェンジの差が大きい程価値が高くなります。また部分的に変色を呈さない部分があると評価が下がります。

色調の対比

ベースになる緑と赤色のカラーがハッキリ出ており、ピーコックブルーからルビーレッドへ色の対比が綺麗に出る事は非常に稀です。

透明度(クラリティー)

アレキサンドライトにはゲーサイト、クォーツなどの内包を認めますが、インクルージョンが少ない石は自ずと評価が高まります。ただしキャッツアイ効果のアレキサンドライトは希少性が考慮されています。

カラット

特に1カラット以上のアレキサンドライトは評価が高まります。なおスリランカ産の18カラットを超えるアレキサンドライトが、ニューヨークのオークションで557,000$(約6,145万円)で落札され、世間の注目を奪ったこともありました。

アレキサンドライトの特徴まとめ

  • 変色は光源の違いによるスペクトル吸収と反射による
  • 産地により色調と変色率は異なる
  • ロシア、ブラジル産の品質が高い
  • 変色率、色の対比が評価される